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【トップ対談】~最高の仲間と、最高の人生を送るための働き方改革~

~ニッセイ情報テクノロジー株式会社 鬼頭誠司代表取締役社長と対談~

当社代表小室がニッセイ情報テクノロジー株式会社 鬼頭誠司代表取締役社長と対談をさせていただきました。ニッセイ情報テクノロジー様の社内向けに作成された記事ですが、転載の許可をいただいていますのでそのままご紹介致します!本当に実現したい働き方改革とは?ぜひご一読ください。

ニッセイ情報テクノロジーでは、社員の心のゆとりと多様性の確保を通じて、仕事の付加価値につなげるための働き方改革を進めています。今回は、株式会社ワーク・ライフバランス代表取締役社長の小室淑恵さんをお招きして、鬼頭社長と対談を行いました。

働き方を変えるために何が必要となるのか、その先にある理想とはどのようなものなのか、お二人のお話を通じて明らかにします。    (敬称略)


■違った文化を経験し、自分を見つめ直した

 

小室:鬼頭社長ご自身のキャリアについてお聞かせください。また是非、鬼頭社長ご自身のワーク・ライフバランスはどうだったのか、ということも教えてください。

 

鬼頭:私は2017年4月からこのポストに就いたのですが、それ以前は日本生命で人事の仕事に比較的長く携わってきました。それ以外にも営業企画、契約審査、金融庁との窓口の仕事や、役員になってからはリスク管理、コンプライアンス、広報、CSRと、非常に多様な経験をしてきました。2回ほど他社に出向しておりまして、フードビジネスの会社と、郵便事業やかんぽ・ゆうちょの親会社である日本郵政で仕事をしています。

一つの会社にいると、なかなか自分を客観的に見つめる機会がありませんが、別の会社に行くと、異なる企業文化の中で立ち位置を見直すこととなり、多様なものの見方を身に付けることができたのが良い経験だったと感じています。

また、1985年入社ですので、どちらかと言うと「昭和的」な旧来型の仕事中心の生活を送ってきたのではないかと思います。ただ、一度きりの人生ですから、最近はオンオフどちらも楽しみたいと考えています。人生を楽しむ上で、心身の健康を管理していくことが大事だと考え、週に1回は泳いでいます。

小室:素晴らしいですね。

鬼頭:できるだけエスカレーターを使わず階段を上るとか、禁酒日を設けることも心がけています。会社としても、良い仕事をするためには社員の健康維持が重要なので、私が着任してから「ヘルシーチャレンジ運動」という取り組みを始めました。

小室:どういった取り組みですか?

鬼頭:健康のためになりそうな目標を自由に設定して、続けられたらささやかな賞品を差し上げるという仕組みです。ですから、泳ぐ人もいれば、マラソンをやる人もいますし、中にはフライドポテトを食べないとか、カレーを食べるといったちょっと変わった目標を設定する人もいます。

小室:楽しみながら取り組む工夫のされた仕組みですね。


■ワーク・ライフバランスはきれいごとではない

 

小室:是非ライフ面についてもお聞かせください。

鬼頭:実は、妻も社会人になったのが同期で、ずっと共働きでやってきました。男女雇用機会均等法が施行される直前で、今のように政府も企業も女性活躍を意識していない時代でしたが、彼女は非常に仕事が好きで、総合職的な働き方を志向してきたんです。しかも、二人とも実家が京都でしたから、非常に遠くて……。

小室:ご両親にも頼れないわけですね。

鬼頭:ええ。その経験から言えば、ワーク・ライフバランスはきれいごとじゃないというのが実感ですね。子どもの送り迎えなどもできる限りやりました。ただ、私は一生懸命やったつもりで、私からすれば妻は戦友なんですが、妻から見ればたいしたことをしていないので、私は落第なんじゃないかな(笑)。

小室:その時代にそこまでされていたのは先駆的なイクメンですよね。

鬼頭:いえいえ。私自身は専業主婦の母親に育てられたものですから、最初はご飯も炊けないようなレベルでした。でも今ではたいていのことはできるようになりました。

小室:それは素晴らしい。育児や家事を経験したことで、管理者・経営者として役立ったことはありましたか?

鬼頭:視野が広がったとは思います。仕事のロジックと家事・育児はだいぶ違いますが、一方で家事も育児も合理性を追求するという意味では科学ですよね。仕事一辺倒であるよりも視野が広がって、お客様のニーズを多角的に捉えて商品を提供するような場面では、より生活者目線に近付けたのかもしれません。


■働き方を変えて、どのような価値を提供すべきか

 

小室:日本の企業で、男性の育児休業の取得率は、まだかなり低い状況です。政府が掲げる「仕事と生活の調和推進」の指標の中で、唯一2020年に目標達成できないとされるのが男性の育休取得率です。御社ではいかがでしょうか?

鬼頭:親会社である日本生命は男性の育児休業取得率100%を実現しているのですが、残念ながら弊社はまだそこまで着手できていない状況です。ただ、自身の経験も踏まえると、男親として育児に参加する意味はあると思います。社会全体でのワーク・ライフバランスの実現が日本経済にも好影響を与えるはずですから、一企業として努力していく必要を感じています。

小室:働き方改革というと、「労働時間をいかに減らすか」という議論になりがちですが、本質的には「いかに付加価値につなげていくか」が大事ですが、御社における仕事の付加価値とはどのようなものか、それは働き方を変えることでどのように実現させたいとお考えでしょうか?

鬼頭:「価値」というのは非常に多義的ですが、私の素朴な理解では、会社の価値は社会の求めるものを提供するところにあります。それを実現する上で、会社として変えてはいけないことと、変えるべきことがあります。前者は企業理念のようなものであり、後者は商品やサービスの内容、品質、価格、生産プロセスなどです。これらは、時代の変化やお客さまのニーズに合わせて常に見直さなければなりません。

この「見直す」と言うことは、簡単ではなくて、新しいことにトライするのと同じくらいのエネルギーを要します。仕事に追われてヘトヘトでは新しいアイデアも出ませんから、社員には現状を見直し新しい事にチャレンジするための心のゆとりが必要です。また、バックグラウンドや価値観の異なる人が一緒に働くことで、新しい発想につながるきっかけが生まれます。その意味では、職場における多様性も重要だと感じています。


■「ゆとり」と「多様性」を生むために必要なもの

 

小室:社員のゆとりを増やすにあたって、どのような課題をお感じでしょうか?

鬼頭:3年前と比べて退社時間が1日平均で1時間程度短くなっており、着実に前進しています。ただ、この業界は締め切りが厳格なので、どうしても仕事が締め切りに集中してしまうことがあります。だからこそ、プロジェクトの合間など休めるときにしっかり休まないとメリハリが付かないのですが、休暇の取得状況を見ると、まだまだ改善の余地があります。多様性については全社員の約2割強が女性で、2017年に入社した人で言うと3割程度。徐々に増えてはきていますが、問題は入社した後です。残念ながら、男性と比較すると女性のほうが離職率は高い傾向にありますが、ここ数年でみると、離職率の男女差は殆どなくなりつつあります。但し、平均勤続年数でみると、まだ女性のほうが短い状況にあります。いかに女性にキャリアを継続してもらうかが課題だと認識しています。もちろん、外国の方やシニア層、障がいを持った方の雇用にも努力するつもりです。

小室:私たちがいろんな企業さんから女性活躍のご依頼を受けて調査をすると、実は制度が足りないのではなく、働き方の問題が浮かび上がってくることがよくあります。女性は結婚や出産に直面してから悩むというより、入社2〜3年目くらいに、この会社でキャリアを積んでいこうとするとどういう働き方になるかを見通してしまうんです。

鬼頭:なるほど。

小室:管理職層を見渡して、結局長時間労働に対応できる人しか昇進できないのだと気づいた瞬間に、「今どんなに頑張っても、育児などで時間制約を持ったらキャリアは途絶えるのだから、頑張るのは無駄だ」「この努力を重ねていっても、女性にはキャリアが積み上がっていくわけじゃない」と悟ってしまう。そこからモチベーションが下がって、頑張りにブレーキを踏み始めてしまうわけです。

鬼頭:会社でのキャリアを見切ってしまうわけですね。

小室:多くの会社は、女性が仕事と育児の両立の問題を抱える段階になってから場当たり的にケアしようとするのですが、たくさんの女性を採用して活躍してもらおうと考えるなら、全社的な働き方を、特に管理職を含めた働き方を変え、入社2〜3年目の時点で社内を見渡した際にも、女性が将来に希望を持てるような環境を作っておく必要があると思います。


■どのように介護と仕事を両立すべきか

 

小室:御社にも私と同じ団塊ジュニア世代が結構いらっしゃると思います。今後、その世代の介護リスクが増大すると確実視されていますが、どのようにお考えでしょうか?

鬼頭:広く1970年代生まれを団塊ジュニア世代とすれば、弊社には約700名おりまして、全体の約3割となります。突出した山になっているわけではないですが、大きな集団であるのは間違いありません。この世代が10年後に50代に差し掛かることを考えれば、そのご両親はほとんど後期高齢者ということになります。多くの社員が介護の課題に直面することは容易に予測できます。

小室:今介護で休業されている方はどれくらいいらっしゃいますか?

鬼頭:介護休暇取得者と合わせると、現在5名です。他方で、直近の離職者を見ますと、9%が介護を理由に挙げています。制度が十分な歯止めになっていないのも、また事実だと思います。プライバシーの関係もあって離職者の真意を深く確かめられていないのですが、そのあたりをきちんと分析して、より効果のある手立てを考えていく必要を感じています。国の政策、企業の努力、個人の努力という三位一体で進めていくべき問題ですが、企業としてやるべきことをしっかりやらないといけないですね。

小室:特に介護に関しては、忙しく働いている人ほど情報収集が不十分で、いざ介護に直面したときの対応が後手後手になりがちです。介護への対応として、今各社で力を入れているのが、30代半ばくらいから介護に関する研修を行い、先んじて情報をもってもらう取り組みです。すでに介護に向き合う人は増えているのに、実際に直面した人たちがお互いに黙っているので、自分は非常にレアケースだと思い込み、会社に言い出せない状況があります。しかも、制度についてもよく知らないので、気軽に使えないわけです。

鬼頭:そうですね。

小室:今のところ最低限の休暇制度しか設けていない会社も多いですが、国の制度について深く理解していれば、いろいろな補助が受けられることがわかって安心できることがあります。不安にかられて退職し、介護に専念するという選択肢を選んでいる方もいらっしゃると思うので、まずは情報提供が重要ですね。

鬼頭:おっしゃる通りです。

小室:会社側は介護研修をするなら40代から50代向けだと思い込んでいますが、実は介護は発生する前にやるべきことがたくさんあるのです。情報を知ることで、認知症予防の取り組みを始められたり、親に会いに行く回数を増やして関係性を深めることができたり、いざ介護が発生したときにスムーズに対応できたりすることにもつながります。

鬼頭:早めに知識を身に付けておくことで、不安が軽減されるわけですね。貴重なご指摘をありがとうございます。


■お客様を巻き込んだ働き方改革

小室:御社の業界には商習慣の問題もたくさんあるかと思います。お客様との契約形態が時間拘束を強めてしまう傾向があると思うのですが、業界全体を変えていこうという機運はあるのでしょうか?

鬼頭:基本的に請負の仕事ですから、発注者側を巻き込みながら業界全体で働き方を変える必要があるのですが、そうした機運はまだ残念ながら盛り上がっていないのが現状です。ただ、業界で中堅以上の企業が働き方改革の成果を出されていることが一つの刺激になっているのは間違いありません。各社が非常に強い課題意識を持っているのを感じています。今手を打たないと、エンジニアは間違いなく足りなくなりますからね。

小室:業界は違いますが、私たちがコンサルした1社にパシフィックコンサルティングさんという建設コンサルティング会社があります。もともと3月末に納期が重なって非人間的な長時間労働をされていましたが、今ではガラッと働き方を変えています。その企業の発注元は国土交通省なので、上下関係が明確なわけですが、当時の社長が国交省に行き、「発注の納期をずらさない限り、建設業界の貴重な人材がどんどん失われて、魅力ある人も集まらなくなりますよ。そんな業界にしていいんですか?」と。

鬼頭:直接訴えたわけですね。

小室:実は国交省側でも同じ問題が起きていて、3月納期の仕事をチェックしないといけないから、膨大な残業をしていました。しかも、国家公務員を志望する学生たちから「国交省はブラックだ」と言われて他省庁に人材が流れているというのです。お互いに構造を変えないとダメだと認識し、納期分散を進めたというケースがありました。このように経営層が動くことで、お客様や業界を巻き込む形でWin-Winの提案をする余地はあると思います。

鬼頭:そうですね。そのあたりも今後の課題だと認識しています。特に弊社の場合は、社内で仕事をする人だけでなく、お客様の会社に駐在するケースもあります。そこは、上のほうから話をしないとなかなか前に進まないと実感しています。


■働き方を変えた先にある理想とは?

 

小室:今の取り組みをどのように加速されていくのか、その先にある理想の働き方とはどういうものか、是非お聞かせください。

鬼頭:まずは、休暇の取得推進も含めて、働く時間を効率化するのが最優先です。それによって、かなりのことが前進するだろうと考えています。理想の働き方については、私自身も、いつもよいコンディションで経営判断を下すために、オフの時間をしっかり充実させる必要を感じています。

他方、全社で見た場合は、個人の価値観が今はかなり多様化しています。その中で「最大多数の最大幸福」を実現できるような組織体になればいいなと思います。トータルで最大の生産性と最大の満足度が実現できるように、どういう組織を作っていくべきか、日々悩んでいるところです。

小室:せっかく生産性を上げられたのに、浮いた時間に新しい仕事を詰め込もうとするケースがありますが、それではもったいないのです。まずは浮いた時間を社員一人ひとりのライフに戻すことが重要です。その結果、社員の皆さんがいろいろなライフの時間を過ごすことによって、多様な価値観を組織に持ち帰り、それが会社の中に多様なアイデアを生みます。

またライフの充実できる企業というブランディングにより、いい人材が採れるようになり、より短い時間で高い成果が出せるようになるでしょう。働き方を変えないまま「何かイノベーションを生み出せ」「柔軟な発想を持て」といっても、無理がありますからね。

鬼頭:本当にそう思いますね。

 


■最高の人生を最高の仲間と共に

小室:2016年にグーグルが「生産性が高い組織の特徴」を公表したのですが、意外なことに生産性が高いチームに共通していたのは、「心理的安全性」が高いということだったのですね。心理的安全性というのは、何か話しても馬鹿にされたり否定されたりしない、安心して発言できる職場であるということです。こうしたメンバー同士の関係性の良さが重要です。

鬼頭:時間的に追い詰められると、どうしても一部の人だけで仕事を進めてしまい、他の人たちを置き去りにしてしまうことがあります。しかし、情報を共有して、育成にも力を入れ、全体を底上げしてみんなでコミュニケーションを取れるようにしていくことで、結果として組織全体のパフォーマンスが上がっていくようにしたいですね。

小室:おっしゃるとおりですね。多くの会社では、目の前で実っている果実だけを取ろうとして、若い芽を育てずに枯れさせてしまうような状況が起きています。長時間労働の企業ほど育成の時間は削ってしまっていて、若手社員のスキルが全然上がっていないことがよくあります。人を育成するゆとりを持つことで、確実に生産性が上がると思いますね。それでは最後に、社員の皆さんにメッセージをお願いいたします。

鬼頭:働き方改革は、生き方改革でもあると思っています。また、仕事の中で達成感や充実感を持つことが、人生においても幸せを感じる重要な要素の一つではないかと思うんです。ですから、生産性高く働くことを通じて最高の人生を成就してほしいですし、一人で成就するのではなくて、同じ志を持っている最高の仲間と共に成就してほしい。companyという単語には「仲間」という意味があります。ぜひ、最高の仲間と最高の人生を送ることができるような会社にしていきたいですね。

ワーク・ライフバランスの実現に向けては、国、自治体、会社も努力していくわけですが、それとともに社員一人ひとりの意志と努力も必要となります。みんなで知恵を絞って、汗をかいて、「Best Life with Best Company」(=最高の人生を最高の仲間(会社)と共に)を追求していきましょう。

小室:本日はありがとうございました。

鬼頭:ありがとうございました。


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