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働き方変革成功企業事例

長崎大学事務局 伊東センター長インタビュー

多様性醸成には働き方の見直しが必要

国立大学法人長崎大学で、「ワークスタイルイノベーション」に取り組んでいる事務局の伊東センター長にお話を伺いました。

各チームの成果はこちら

国立大学法人長崎大学 ダイバーシティ推進センター

伊東 昌子 センター長 (副学長)

田野 佐恵子 コーディネーター

※インタビュアー:株式会社ワーク・ライフバランス

松久 晃士 コンサルタント

堀江 咲智子 コンサルタント

松久コンサルタント長崎大学では、2015年に「ワークスタイルイノベーション」(働き方見直しプログラム)がスタートしました。取り組みが始まったきっかけを教えてください。

伊東センター長私たち「ダイバーシティ推進センター」は、男女共同参画についての意識改革や両立支援、ワーク・ライフバランスなどの環境整備を行ってきました。しかし、こうした取り組みがうまく機能するためには、働き方自体を見直す必要性が根底にあると、以前から考えていました。

例えば「仕事と介護の両立」と言っても、日ごろから長時間労働で、自分にしか分からない 長時間労働で、自分にしか分からない業務ばかりだと、突発的に職場を抜ける際、周囲に業務を引き継ぐことが難しくなります。結局、夜遅くにまた出勤して業務の続きをやるなど、スムーズに両立することは困難です。

そうしたことから、かねがね働き方改革の必要性を感じてはいたものの、実際には、なかなか手をつけられずにいる状況でした。

そんな中で、私たちの提案した事業が、2015年度の文部科学省科学技術人材育成費補助事業「ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ(特色型)」として採択されたのです。

当事業の一環で、いよいよ本格的に働き方見直しを始めることになりました。それが「長崎大学ワークスタイルイノベーション」です。


松久コンサルタントこのプログラムがスタートした当初、どんなお気持ちでしたか?

伊東センター長もともと私自身は、大学病院に長年勤務していましたので、他の学部の事情や、そこで働く教員の皆さんの働き方については、ほとんど理解できていませんでした。そんな状況で、この取り組みをどういう形で、どんな職場にアプローチしていけば効率的に進められるのか、最初は見当もつきませんでした。

まだ経験がない私たちが単独でやるよりは、経験豊富なプロと組んでやる方が効果的だと考え、御社と連携して進めてきました。それでも、未知の職場で取り組みを進めることには不安がありました。しかし、コンサルタントの堀江さんが「仕事の詳しい内容や専門用語まで深く理解する必要はない。むしろ、そのような知識がないからこそ、コンサルティングできる」とおっしゃったことが印象に残っています。私たちも事務局として経験を重ね、そんな境地に達すれば、仕事の内容の異なる学内の様々な組織に対応できる事務局になれるのではないかと期待しています。今後もさまざまな部門に働きかけをしていきますが、堀江さんのようなスタンスを持てたらと思います。


堀江コンサルタントそう言っていただけると私もうれしいです。
対象となる実施部署の方々の反応について、事務局としてはどのように予想されていましたか?

伊東センター長トライアルチームの候補を決め、上司の皆さんに事前説明に伺う際は「趣旨は分かるが、負担が増えるのが心配」という反応が多かったですね。通常の業務で手一杯なのに、さらに業務が増えるじゃないかと。

「実際やってみて何か変わりますか?」「内政干渉はしないでほしい」と言われたこともありました。「今まで築いてきたものを変えるなんて」と言う人もいました。積極的に「やってみたい」という反応は、少なかったのが事実です。

ただ実際には、比較的若手に問題意識があって、変わること(改善すること)に対して意欲のある方が多いため、賛同してもらいやすいと感じています。


松久コンサルタントなかなか好意的な反応ばかりではなかったのですね。そんな中、取り組みをスタートした1年目は、どんな様子だったのでしょうか。

伊東センター長特に1年目は、チーム選定に時間の余裕がなく、私たち事務局自体も流れをよく理解していませんでした。結果を急ぎすぎ、チームに迷惑をかけたという苦い思い出もあります。

事前説明に伺い、初回のキックオフも終わり「さあ、いよいよ!」という場面に来て、まだ「何をするのかよく分からない…」という反応が見受けられました。カエル会議の議事録がなかなか提出されず、気を揉んだこともしばしば。少なからず予想していたことではありましたが…。

最初の立ち上がりがもっとスムーズであれば、さらにうまく進んでいくのだろうと思います。軌道に乗るまでのタイムラグが、少しもったいないと感じます。チーム側も「何かしてくれるのかな」と、待ちの態勢になっていたのかもしれません。そこは事務局としての反省点です。

今後はトライアルチームを早々に決め、先発チームの報告会にも参加してもらえるよう、段取りができればと思います。「こんなに変わるんだ」ということを、前もって実感してもらえれば、取り組みへの意識も変わりますよね。


松久コンサルタント初年度の取り組みの中で、印象的なエピソードを教えてください。

伊東センター長業務が非常に忙しく、定例会に出席できたのがリーダー1人ということもありました。訪れた私たちがリーダーを取り囲む格好で(笑)、 「どうやって進めればよいのか」と、今後の進め方や行方について、リーダーと共に不安になったことを覚えています。しかし、メンバーが1人も来られないほどの忙しさだからこそ、取り組むべきプログラム です。むしろ、 リーダーともじっくりとこの取り組みについて話をする機会になり、いま振り返ってみると、印象的な出来事です。

また別のチームでは、「同じ部署にいながら、他のメンバーの業務内容をよく知らなかったが、このプログラムに参加してやっと少し理解できるようになった」ということもありました。これをきっかけに、 チーム内で何らかの連帯関係が生まれれば、お互いにきっといいことがあるんじゃないかと。チームについて考えさせられた場面でした。

ゴールイメージを「たおやかな女性研究者集団」と掲げたチームもありました。もともと、仕事と生活の好循環を意識していたチーム。プログラムをやっていくうちに、コミュニケーションが一層深まり、チーム力や時間管理能力がさらに加わって、最強の「たおやかな女性研究者集団」になったと思います。

全く初めてのプログラムでしたから、最初は皆さん、「一体どんなことが始まるのか」と内心戸惑って いる様子でしたが、初年度ひと通り取り組むことで、それぞれのチームに何か得るものがあると感じました。

中には引き続き「自走」してくれているチームがあります。やるほどに良くなっていくという実感はあります。多くのリーダーが「やってよかった」と話してくれています。

 

 


堀江コンサルタント:2年度目(2016年度)は、地元長崎の 加盟コンサルタント・吉岡和佳子さんが、よりコンサルティングに深く関わることや、 事務局の皆さんの自立も目指されましたが、そこにはどのような思いがあったのでしょうか。

伊東センター長いつまでも、東京の御社から遠い長崎まで、はるばる来ていただくわけには行きませんものね(笑)。

「自分たちの課題を自分たちで解決するチーム」を形成したいのであれば、「自分たちの課題を自分たちで解決する大学組織」にならなければならないと思いました。

いずれは、自分たちだけでやっていけるように、加盟コンサルタント・吉岡さんの協力を得ながら、私達もコンサルティングのスキルを学んでいきたいです。

 


堀江コンサルタントこの流れを高めていくにあたり、どういった期待で2年度目のトライアルチームを選ばれたのでしょうか。

伊東センター長大学内には多様な専門性を持ち、多様な形態のグループ(部署)があります。その中から、「人数的に適切であること」「リーダーとなる人物がいること」「働き方見直しについて関心を持ち、変わることに期待しているチームであること」を主眼に選定しました。部署の長に、プログラムの趣旨と内容をお話しして、賛同してもらえた場合、参加するチームの皆さんに主旨説明をしました。

早めに余裕を持って説明をし、納得の上で進めることができたので、2年度目の選定は比較的スムーズでした。上役にしっかり説明をし、理解を得た上でリーダーを紹介してもらう―という流れです。欲を言えば、 上司の方にもチームに参加してもらい、メンバーの皆さんと一緒に働き方見直しに関わってほしかったですが(笑)。

 


堀江コンサルタント実際には、リーダーのかかわりはチームによって様々です。メンバーと同じ目線で積極的に意見を出すリーダーもいれば、「メンバーに権限委譲するいい機会だ」と言って一線引いてご覧になっているリーダーもいらっしゃいます。

2年度目の取り組みでは、伊東先生にも初回から役割を持っていただいたり、よりご自身たちでできるようになるために、取り組み方も変えていきましたね。

各チームでの取り組みもまた違ったものとなりましたが、どんなことが印象に残っておられますか?

 

伊東センター長中 盤の定例会でのことですね。あるチームに、コンサルタントと一緒に訪問すると、会議室がきれいに片付いていたんです。その時は、会議の議事次第もホワイトボードにきちんと書かれていて、非常に驚きました。最初の定例会の時は、ホワイトボードが掲示板代わりになっていましたから。

その後も同じ方式で会議が進められているそうです。メンバーが納得の上で、主体的に実践しているということがよく分かりました。私たちは「あんな風にしてください」と一言も注文していないのに。これからも継続してやってくれると思います。

それまでのカエル会議や、朝メールで蓄積した変化の表れでしょう。チームの皆さんが、働き方を変えることに対し、どんどん前向きになっていく様子がうかがえました。

「他部署と合同で行う会議に、自分たちの会議のやり方を取り入れたら、時間を短縮できるようになった」という嬉しい話も聞きました。プログラムの効果が、当該チームにとどまらず、周囲へも波及していることを実感しました。

 


田川コンサルタント この取組はメンバー、リーダー、事務局の方、各々が役割を担って主体的にに取組むからこそ、「もっと良い働き方にするにはどうしたらいいだろうか」という探求心が生まれます。また、組織の風土として定着し、持続可能な取組へと進化をしていきます。

2年度目の最終報告会を終え、取り組みとしての区切りを迎えましたが、今はどのような感想をお持ちですか?

 

伊東センター長 2年間事務局として参加し、気づいたことがあります。働き方を改善するために大切なことは2つ。「個人の意識」と「コミュニケーションとチーム力の醸成」です。

事務局として関わってみて「チーム力って鍛えられるんだ」と実感したんです。鍛えられたチーム力で仕事すれば、自ずと成果は上がる。これが一つの大きな気づきでした。

このプログラムは「チーム力」 を育てる仕掛けがあるので、上手に利用すれば、きっと良い効果が得られるはずです。初めはどうしても、多少のやらされ感があるかもしれません。プログラムの意味に早く気づいてもらい、「面白いと思える領域だ」とメンバーに納得してもらうこと。そこに至るための工夫が、非常に大事だということに気づきました。事務局の重要な役割であると感じています。

日々の業務をやっていて「楽しい」と思うことは、それほど多くないかもしれません。辛いことも多いですが、「変わること」「良くなること」を常に意識して仕事する人材に変われたら、きっと「面白い」と思えるようになるのではないでしょうか。

非常にうまくいっているチームは、定例会でも楽しそうな雰囲気がありますね。共に考え、変えていくことを楽しんでいるように見えました。基本的に「変わりたい」と考えているチームは、変化の程度も大きいように思いました。もう、やらなきゃ損なんです。

 

 

 


伊東センター長このプログラムは「自分たちで課題を見つけ、自分たちで解決方法を考えていく」というやり方。働き方に対する満足度や課題意識など、もともとの状況によって、成果もさまざまに変わってくると思います。

参加チームと同じような 課題を抱える部署は他にも必ずあるはずですから、学内で横展開はやりたいです。チームの成功事例を、モデルケースとして全体で共有し、実践してもらえたら。

体験者が発信源となって、良さをアピールしてもらうのは大きいですね。単にやり方を真似るのではなく、自分たちで課題を発見し、課題解決策を考える方が、よりマッチした方法になると思います。

このプロジェクトに参加していること自体、大学をより良くするということ にコミットしていることだと理解しています。あともう少し、大学を挙げて実施しているプロジェクトになってきたら嬉しいです。

 


松久コンサルタントあらためて、2年にわたり参加された皆さんをご覧になってみて、取り組む前と後ではどのような変化がありますか?

伊東センター長どのチームも、それぞれに多様な成果を出していると思います。チームごとに課題が違うから結果も違うのは当然ですが、私たち事務局がスタート時に到底予想できなかった変化も見られて楽しかったです。

また、自分たちで課題を発見・解決していく「チーム力」も出てきていると思いました。

私がこのプログラムで一番学んだことは、その「チーム力」と「関係の質」です。働き方の見直しも、一人で考えたところで、なかなかうまくいきません。チーム全体で課題や解決策を共有したり、共感したりするプロセスに関われたことに、事務局としての喜びを感じています。

 

松久コンサルタントこの取り組みを行う中で、嬉しかったのはどんなときですか?

 

伊東センター長あるリーダーに「参加させてもらって感謝しています」と最後に言われたときは、涙が出そうでした。

プログラムに取り組むことの意味を、メンバーが心から納得してもらえたと実感できるときは、本当に嬉しいですね。

「やってよかった」「やったが勝ち」という思いを、実際に体験した人から広げていってもらう仕組み作りは、これからです。今後さらに、成果を他部署へと波及してもらいたいと思っています。

参加チームのある大学病院では、様々な対象者に成果発表会を実施したようですので、良い取り組み、自分たちに適合している取り組みは、積極的に取り入れてほしいです。


松久コンサルタント事務局として大変だったのはどんなことですか?

伊東センター長反応のないメンバーがどうしても気になりますね。「この人は貴重な機会を逃している…」と思うと残念でした。

キックオフ当初は、どうしてもチームのメンバーに、やらされ感がありますよね。その中で、事務局がどう関わっていけばよいのかが難しいです。チームごとに個性があるので、それぞれに事務局も適応する必要がありますが、これからも学び続けていく必要がある大きなポイントだと思います。

堀江コンサルタントできる限り早いタイミングで、私たちが職場を混乱させたり、これまでのやり方を否定するような存在ではなく、「職場をプラスの方向に変える手伝いをしてくれる人である」と認識してもらうことが大切ですよね。初回から伊東センター長には毎回、「こんな変化を出してくれてうれしい」と承認のコメントを出していただいたのは、とても良かったと思っています。


松久コンサルタントでは最後に、今回の取り組みの経験を踏まえて、これから「働き方の見直し」を始めようと考える自組織の方は、何を押さえておくとよいと思われますか?

伊東センター長立ち上げをいかにうまくやるかがポイントだと思います。最初の1〜2ヶ月を無駄にしてしまうともったいない。お互い時間のロスになってしまいます。初めからきちんと説明をしておくことは大事ですね。取り組みへの意識が高まっているチームほど、成果が高いと思います。

引っ張っていくリーダーのリーダーシップはもちろん大事ですが、リーダーはむしろ後ろで見ているくらいで、ときどき「そこはね…」など軌道を修正したり、確認したりする程度でもいいのかもしれません。

この働き方見直しプログラムは、コンサルタントや事務局のサポートがなくなっても、自分たちで回せるサイクルを獲得 するための8ヵ月だと認識しています。

ゴール設定も、この辺でいいと決めてしまわず、背伸びするぐらいが、やる方も楽しいのではないでしょうか。このプログラム、納得感があって楽しめればいいと思うんです。人生のPDCAサイクルそのものを、「働き方」という視点に置き換えているプログラムだと考えれば、そんなに難しいことではないのかもしれないと感じています。


国立大学法人 長崎大学

http://www.nagasaki-u.ac.jp/index.html
ダイバーシティ推進センター
http://www.cdi.nagasaki-u.ac.jp/
コンサルティング事例 長崎大学チームリーダーインタビュー
https://www.work-life-b.com/?post_type=information&p=7441&preview=true

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