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働き方変革成功企業事例

トップインタビュー 熊本製粉株式会社

トップインタビュー 熊本製粉株式会社

熊本製粉株式会社では、全社員向け講演と3日間にわたる管理職向けワーク・ライフバランス研修を実施されました。研修の中では、メンバーに働き方を見直せば個人の力もチームの力も上がっていくということを説明したうえで、働き方を見直す会議「カエル会議」を定期的に実施。部下との関係性をしっかりと構築し、自分たちでできることには真っ先に取り組み、会社として取り組んでほしいことは提言にまとめるなど高い成果をあげられました。
今回ワーク・ライフバランス研修を実施することにした背景、他社に抜きんでて高い成果を出してくださった秘訣を熊本製粉株式会社代表取締役 宮本貫治様、執行役員人材開発部長 福島真理子様に伺いました。
(担当コンサルタント 堀江咲智子


すべてのカギは「コミュニケーション」

──本日はよろしくお願いいたします。まずは宮本社長ご自身のお仕事の経験から振り返っていただきたいと思います。

宮本様 私はブリヂストンに入社したのですが、営業職だったこともあり、毎晩11時過ぎに帰っていました。仕事だけでなく、お付き合いがあったり、プライベートで遊ぶこともあったりで、まっすぐ帰宅することがなかったんのです。かつてサラリーマン川柳で第一位を獲得した作品に「まだ寝てる 帰ってみたら もう寝てる」というのがありました。我が家は、いつも“もう寝てる”状態でした。(笑)

──そんな経歴をお持ちだったのですね(笑)
研修初日から、管理職の皆さんが積極的に発言される様子が非常に印象的でした。後ろに宮本社長はじめ全役員の皆様がお揃いの中で、あんなふうに活発な議論ができる会社も多くはないと思います。日ごろから熊本製粉でコミュニケーションを大事にされている様子がうかがえました。現在のようにコミュニケーションを大事にするという姿勢はどういった経験から生まれたのでしょうか。

宮本様 そうですね。そもそも職場のトラブルの原因には、コミュニケーション不足が多いのです。お客さまとの間も同じです。きちんとしたコミュニケーションが取れていれば、トラブルが起きたとしても、意外と早く修復できます。ですから「コミュニケーションをしっかりとろう」とずっと言い続けているのです。

弊社の基本姿勢は「すべてはお客様の“ありがとう”のために」とし、心構えとして「コミュニケーション&スマイル」「Self  Think , Self  Action」の2つを掲げています。お客さまから「ありがとう」と言ってもらえるために、この2つをやっていこうという気持ちを込めています。コミュニケーション&スマイル(C&S)は、カスタマーサービス(CS)にもかけた言葉です。お客さまと笑顔でコミュニケーションを取っていれば、いい仕事ができますし、自ら考えて自ら行動していくことでお客さまの信頼も獲得できます。

──日常の中で、社員の皆さんとコミュニケーションを密に取るための工夫があるのでしょうか。

宮本様 社内に「気づきメモ」というのがあります。誰でも自由に書くことができるものです。「ここを改善してほしい」など、なんでもいいから気づいたことをメモして出してくださいとお願いしています。現在では、そのメモをペーパーレスでみんなが閲覧できるようにしています。メモに対してはトレーナーが必ずコメントを入れるようになっていますし、私からコメントすることもあります。

ほかには、飲みニケーションの場を設けることもあります。何かのコンテストで1位になった人がいると、行きつけのお店で祝勝会をするなど、そういったコミュニケーションも心がけています。

福島様 社長室もあるのですが、宮本自身は社員に囲まれて仕事をするほうが好きなようで、社長室に一人でいることはほとんどありません(笑)積極的に社員に声をかけていますし、社員のこともよく見ています。

──社員の皆さんが宮本社長に対してもご自身の思いをきちんと伝えられるのは、そういった日ごろの行動が表れているのですね。

弊社では、研修でもコンサルティングの場面でも、「関係の質」を向上させることをまず初めに実施しています。関係の質が高まったチームほど、多くの成果を出しているためです。研修初日でもお伝えしましたが、結果の質を向上させるには、関係の質を向上させることが大切なのですが、熊本製粉ではすでに関係の質が高い状態からスタートしているので、研修でも高い成果が出せたのだと思います。


ワーク・ライフバランスで個の力を上げる

──ワーク・ライフバランスについては、どのようなイメージをお持ちですか?

宮本様 当初は「仕事と私生活のバランスを取る」ものとして捉えていました。だから、単純に残業を削減していけばいいんじゃないか、と。でも、それだけではありません。”個の力”を上げていくための1つの道具としてワーク・ライフバランスを使っていく。”個の力”を上げるためには、インプットが必要であり、インプットのための時間創出が必要という発想につながっていきます。
もちろん、”個の力”を上げるには、研修で学ぶことも必要です。これについては社内で研修制度を設けていますし、通信教育も受けられます。みんな積極的に学ぶようになっていますが、それ以外でも自分を高める手段はあると思うんです。

1回目の研修を受けて、ある受講者が報告書の中で感想を書いていたのですが、その中にこんな内容のものがありました。「私もできるだけワーク・ライフバランスの考え方で時間をつくり、地域の皆さんとネットワークを広げる活動に努めることで、自分を高めていきたい。」これは、すごいところに気づいているな、と。

個々の力を上げるための時間創出がワーク・ライフバランスの根幹ではないかと思います。個の力を上げることで、「チーム熊粉」としての力も上がり、それが会社としての力になっていくということですね。

──”個の力”をチーム熊粉の力につなげるというのは、ワーク・ライフシナジーの考えと一致していますよね。研修でもお伝えしましたが、さっそく具体的な行動を起こそうと思ってくださることも担当コンサルタントとして非常にうれしかった点でした。ワーク・ライフバランスは女性活躍のためのものといわれていましたが、今後はマネジメント層の介護と仕事の両立にも関係していくと考えています。御社では介護の問題はどう思われていますか?

宮本様 正直なところを申し上げると、時間を創出して介護に充てるというところにまで取り組みが至っていません。ただし、今後は介護と仕事を両立できるところにモチベーションを感じる人も増えてくると思います。その意味では、両立するための仕組みが必要であると感じています。

──これから、世の中全体が介護と仕事の両立という課題に立ち向かっていく中で、介護の経験を持つ社員のアイデアが活かされることも出てくると思います。介護と仕事を両立するという大きなマーケットに対して商品を投入していくことも、ぜひ経営戦略の中に入れていただくとよいのではないかと思います。


大切なのは「適正な報酬」と「自己実現の喜び」

──宮本社長にとっての理想の働き方についてお話を伺いたいと思います。

宮本様 先日、新聞で、ある外食企業のインタビュー記事を読みました。「人手不足の解消には賃上げが必要ではないか?」という質問に対して「賃上げだけでは解消しない。今はワーク・ライフバランスも問われる時代だ」と答えていたのが印象的でした。確かに給与が高いに越したことはないと思いますが、新卒者の価値観はもっと多様化しています。その中でワーク・ライフバランスの考え方が求められているのを痛感しています。
それを踏まえて理想の働き方を申し上げるならば、適正な報酬と、自己実現の喜びを得られるような働き方が理想的な働き方ではないかと思います。「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」という山本五十六の有名な言葉があります。企業でいえば、マネージャーに自分の仕事をほめられると、部下は喜びを感じて、もっと高みを目指したいという気持ちになっていくと思います。ただ言葉でほめられるだけのではなく、適正な報酬も得られる。そうなることで、自己実現していけるような働き方が理想ではないでしょうか。

──おっしゃる通りですね。ワーク・ライフバランスは「新しい報酬」ともいわれ、自由に休める、自分らしい働き方・生き方ができる、自己実現できるというところで注目を浴びています。そこには、宮本社長がおっしゃるような背景があると思います。


人材育成のポイント

──福島さんにもお話を伺いたいと思います。今回、研修を実施しようと思ったきっかけを教えていただけますでしょうか?

福島様 2年前、宮本から直々に「今、会社の中で人材育成が大切だと思うから、そういう部をつくる」という話があり、人材開発部を担当することになりました。私どもを取り巻く内部環境、外部環境が非常に厳しく変化していることもあり、迅速に取り組む「スピード」。そして、既存のものは「進化」させ、柔軟に新たなことにチャレンジをする「挑戦」を持って取り組みたいという思いがありました。
具体的には、サークルと個人による「QC、ZD、気づきメモ」の3つの改善活動を軸に人材育成に取り組んだり、いろいろな教育体系を整備し、自発的に学ぶことができる通信教育を強化したり、社内アンケートを実施し、キャリアカウンセリングも行いました。その中で出てきた課題の一つに、会社の中での満足度が年代年単位でばらつきがあるというものがありました。それに対して、いくつか施策を立案する中で、「個の力を上げつつ、働き方改革を進める」というものを置きました。

まずは推進役である管理職を対象にマネジメント力の強化を進めるつもりでしたが、社内でもワーク・ライフバランスという言葉についての理解がまちまちだったこともあり、折角ワーク・ライフバランス社さんに研修をしていただくのであれば全社員向けにワーク・ライフバランスの必要性についてしっかりメッセージを発信する機会を設けたいと考え、実施しました。遠地のメンバーは、TV会議で参加しましたが、業務の都合で参加できなかった部署や社員も、その後積極的に上司が勉強会を開催しフォローしたり、DVDで個人学習をしています。

──人材育成については、どのようなところに力点を置かれているのでしょうか?

福島様 私どもは来年創立70周年を迎える企業ですが、特徴として、30歳以下が全社員の約4割を占め、中でも女性社員が約35%で25歳前後の若い世代が多いこともあり、コミュニケーションを大切にしています。先ほどご紹介した「気づきメモ」でいえば、一人ひとりにトレーナーを任命し上長だけではなくトレーナーもアドバイスをするほか、内容について役員や全社員が見られるようにするなど、育成とコミュニケーションを兼ねた仕組みを取っています。また、若手に対するOJTを担うメンターと、プライベートなど業務以外の支援を行うブラザー&シスターの制度を非常に厚く設けています。

人材育成計画に関しては、宮本から「個人カルテを作成して、1年後、3年後、5年後について本人の希望を踏まえて、長所短所をしっかり見つつ育成していきなさい」というアドバイスがあり一昨年からその計画をもとに、面談の機会にコミュニケーションを取りながら育成につなげていく仕組みを運用しています。

──なるほど、人と人との関わりを積極的に設けて育成を行っていかれているのですね。先ほどのコミュニケーションを重視されているお話とつながっていきますね。

宮本社長はどのような意図で人材育成に注力されたのでしょうか?

宮本様 福島が申し上げたように、若い人たちが多く、人材育成は欠かせないという背景がありました。通信教育や研修を通じて育成していくのもよいのですが、最も大切なのは継続することです。常日頃から教え込まないとなかなか身につかないので、それぞれの部門長が個々人の育成計画をつくって、具体的に実行していく仕組みを作ってもらいました。現実問題として、部署によっては計画を作っただけで終わっているところもあります。そこはさらにブレイクダウンしていく必要を感じています。

──今回の研修では、「実行」というフェーズのお話も多く盛り込ませていただきました。皆さんの実行力が高まって、計画だけでなく実際に行うことができたら、チーム熊粉の力はますます高まっていきそうですね!私も楽しみです。


着実な変化を実感

──今回の研修では各回でそれぞれ宿題を出しました。皆さんが宿題に取り組まれている中で、印象に残ったエピソードがあれば教えていただきたいと思います。

福島 1回目の勉強会の後に宿題に取り組んでもらったのですが、席に戻るなり宿題をメンバーに発信するためのメールをつくり始めている社員がいて、「これ見てもらっていいですか?こんな感じで進めようと思います」と言ってくれたことがありました。
自発的にメンバーに語りかけをしたり、即行動を起こしたりしているのが非常に嬉しく感じました。

私も社内で顔を合わせた折などに「この間の研修はどうだった?」「難しいところはない?」などと、できるだけいろいろな人に声をかけてコミュニケーションを取り、感想や疑問点などを引き出すように意識しました。
管理職でもワーク・ライフバランスは初めて学ぶことであり、戸惑いも大きかったはずです。限られた時間の中で、できるだけ情報を共有し、ベクトルをあわせることに努めました。

──福島さんには事務局としても非常に頼もしく、困っていそうなチームを見かけるとすぐに連絡をくださり、相談してくださいました。私たちがお目にかかれる機会は多くないですので、こうして細かいフォローをしてくださると研修の効果も高まっていくと改めて感じました。研修3日目が終わりました。皆さんには、明日以降に向けた決意表明をしていただきましたが、既に感じていらっしゃる変化があればお聞きしたいと思います。

宮本 先ほど申し上げた「地域の皆さんとネットワークを広げたい」という社員のように、さまざまなところに気づいてきているのが、すごい効果だなと思います。人財力について3日間の研修で高めることができて本当に良かったと思いました。自分で気づいたことが腹落ちして、実際に行動が変わっていけば、”個の力”が上がっていくと期待しています。

福島 最初はカエル会議も参加者の表情が固く、意見もなかなか吸い出しづらいように見え、マネージャーも苦労している感がありました。ただ、会話が活発なチームを見ていると、やはり笑顔が出ているのがよくわかります。会議でタイマーを活用したり、付箋を使って必ず1回は意見を述べることをルール化するなど、研修で学んだ内容を実行している様子を見て、非常に嬉しくなりました。
まだ解決すべき課題はありますが共にに学び合いながら上手くいっているケースをどんどん広げていけばよいのかなと思います。

また、定期的に改善活動を推進するリーダーの会議を開催していますが、その際カエル会議での取り組みを、前述の改善活動の一つに落とし込み、成果を発表しあい、共有化したいと提案がありました。それにより、ボトムアップで来春の発表会はWLBに関するテーマで行うことになりました。
実際に研修で、カエル会議の運営方法を学んだのはマネージャーだけですが、研修を受けていないメンバーも自発的に歩みを進めており、WLBという言葉や行動が、少しずつ全社に浸透していることを実感しています。

──社内で上手くいっている事例があるのは非常に貴重だと思います。働き方が変わった様子を見て、他の社員の方も考えや意識を変えていく。それが会社の風土も変えていき、働きやすい会社につながっていくと思います。今後の展開がますます楽しみですね。
それでは最後に、この対談をお読みになっている方、社員の皆様に、一言メッセージを頂戴したいと思います。

宮本 「コミュニケーション&スマイル」。これがすべてだと思います。

──この活動がこれで終わらず、熊本製粉さんの血肉となり、チーム力を上げていく一助になればと思います。引き続きどうぞよろしくお願いします。今日はありがとうございました。


熊本製粉株式会社

熊本製粉株式会社
http://www.bears-k.co.jp/

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