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【イベント】~業績も社員満足度も徹底向上~「成長戦略としての働き方改革」

「成長戦略としての働き方改革」 ──ここでしか聞けない!働き方改革の裏話

昨年12月18日(月)に、さくらインターネット大阪本社で開催されたシンポジウムの一部を様子ご紹介
・小室がモデレータとなり、に様々な裏話を聞き出します!
■ゲスト
さくらインターネット社長:田中邦裕様
ストライプインターナショナル取締役:神田充教様
ヤフー 大阪開発本部開発1部 部長:田中真司様


■働き方改革で直面した「壁」

小室:ここではお三方から、ぜひ突っ込んだお話をお伺いしたいと思います。おそらく皆さんたくさんの壁にぶつかられていると思いますので、一番の苦労はどのあたりだったのかをお聞かせください。

田中(さくら):制度がいろいろあっても、ちゃんと使えるか、使われるかどうかは別問題だと思っています。たとえばフリーアドレスをやるのは簡単ですけど、なかなか反発が多くて浸透しない。導入したものの、毎日同じデスクを使ってしまうということもあります。フリーアドレスなのに、なぜかシャッフルデーを設けたりするなど、どうしても難しさはありますね。

小室:私がよく聞くのは、若手のほうが働き方改革を望んでいるのかと思いきや、むしろ若手が「もっと働きたい」と言い出すケースがあるということです。さくらインターネットの田中さん、そういうことはありましたか?

田中:結果として若い人が長時間働いていますが、実際に働きたいのかどうかというのは正直わかりません。60時間くらい残業をしていた新人に聞いてみたところ、やりたくない仕事だったということもありましたし……。副業が認められると、会社は定時で終えて、ライフの時間に好きなことをして働くようになるのかな、とも思っています。

小室:田中さんが100時間ぐらい残業をしている社員と何度も面談したというお話を聞いて驚きました。社長と何度も個人面談をすることって、なかなかないですよね。最初はどんな回答で、それに対してどうお話されていったのでしょうか?

田中(さくら):最初は「忙しいから無理です」と言われて、私は社長なんですけど(笑)、話をしてもらえなかったんです、それぐらい不機嫌でした。そこで一番重要だったのは、支援者としてのスタンスです。彼は、自分が関わっているプロジェクトが中断するとお蔵入りになってしまうと考えていたので、中断する代わりにプロジェクトの予定を半年先まで延ばすことを提案しました。プロジェクトを支援するという前提で中断してもらったわけです。


■マインドセットのスイッチが入った瞬間

小室:そうやって個人にまでしっかり対応されたというのが、とても印象的でした。ところで、今日のお三方は、どこかでマインドセットがあったんじゃないかなと思います。いつ、どんな感じでスイッチが入ったのか、神田さんからお聞かせください。

神田:私はもともとホワイトの働き方をしたいと思っていました。新卒で入ったP&Gという会社では、最初の上司が外国人で、非常に家庭を大事にする働き方をされてたんですね。それを見て「こういう上司になりたいな」「自分がモデルになるような働き方をしなきゃな」と漠然と思っていました。

そのあとその後の転職で、超ブラックな会社も経験しました(笑)、朝9時に出社して5時帰社。5時というのは朝の5時なんです。 プロジェクトのリーダーに午前3時に起こされるような毎日でした。「こういう働き方は、格好いい働き方じゃないな」と思って辞めて、またホワイトの働き方を試みました。

そこからもう一段スイッチが入ったのが、やっぱり自分に子どもができたときです。子育てはチームで取り組むものであり、チームにおいては役割分担が必要ということで、平日も含めて私が毎日夕食をつくるようになりました。かつ、自分が労働モデルでなければいけないと思っているので、早く帰って子どものために毎日夕食をつくっているというのを、折に触れて社内で発信しています。

小室:以前、「インスタ映えする写真を公開するのがポイントだ」とお聞きしました。すごく素敵な家族の写真を撮られていますよね。そういうのを見ると、独身の方たちも自分のライフがほしいという気持ちをポジティブに持てます。

私がいろんな企業さんを見て思うのは、今の若手は想像以上に結婚や子育てに悲壮感を持っているということです。なぜなら、超長時間労働の両親に育てられたからです。なので、若い人たちに明るいイメージを持たせてあげることも、働き方改革をする上で重要だと思います。

さくらインターネットの田中さんは、人事の方からマインドセットされたというお話でしたね。そうやって、人事から働きかけることでトップが変わるというのは希望のあるお話です。あきらめずに下から情報を上げていく、議論をしていくのは素晴らしいことだと思いました。


■働き方改革に不可欠なツール

小室:では、働き方改革を進めていく上で投資すべきツールなどがあれば、ぜひご紹介いただきたいのですが、いかがでしょうか?

田中(ヤフー):ヤフーでは今積極的に、自宅でもカフェでも、どこででも働いていいというかたちをとっており、コミュニケーションツールを活用しています。インターネットにアクセスさえできれば、チャットでやり取りをしたり、ライブでフェイスツーフェイスでコミュニケーションを取ったりすることもできます。

そういう体制を取っていれば、たとえば災害時に誰も出社できないような状況にも対応できます。そこで、会社として強制的に「今日は出社日だけど全員自宅勤務にする」みたいな日を作ったりしています。数千人の社員が、社外で一斉にチャットツールなどでコミュニケーションを取ることで、負荷に耐えられるかどうかのテストにもなるんです。

小室:ヤフーの田中さんのお話ですごく面白かったのが、全員スマホしか使っちゃいけない日もあったということです。そうすると開発の人もスマホで仕事するわけですね。

田中(ヤフー):そうなんです。今はその制度はなくなったんですけど、スマホが普及しはじめたころ、「金曜日はスマートフォンとタブレットしか触っちゃいけません」といった取り組みを強制的に行いました。

「どうやって仕事すればいいんですか?」という文句がいっぱい出るんですけど、「自分で考えてください」と。結果的に「ここはスマートフォンでできないと不便だよね」といった気づきが生まれて、何とか使いやすくしていこうという動きにつながり、今のようにいつでもどこでも働ける環境ができたんです。

田中(さくら):やはりコミュニケーションツールの使い方を変えると、会社は変わると思います。私は、基本的にメールを読まないんです。それで失う仕事よりも失う時間の方が惜しいと思っているので。ただ、それでも私あてのメールを見ないといけないので、秘書や広報のグループに届くようになっています。また、チャットでのやり取りを全部オープンにしています。シークレットな情報以外は、すべて共有しています。

神田:コミュニケーションということで、先ほど「amilyアミリー)」というアプリを導入したとお話ししました。あれは本当に必要に迫られて作ったものなんです。店舗スタッフとコミュニケーションを取りたいとき、店舗スタッフの1人ひとりがメールアドレスを持っていない。だからスタッフに「ありがとう」「おめでとう」と言うためのツールを作るしかなかったんです。


■どうすれば会社が自主的に変わるのか

小室:ありがとうございます。では、ここで会場からご質問をいただきたいと思います。

参加者A:インナーコミュニケーションの導入についてアドバイスをお願いします。

参加者B:AIの活用についてご意見をお聞かせください。

参加者C:社員の自主性をどのように養っていけばよいのか、トレーニング法があれば教えてください。

神田:インナーコミュニケーションのご質問にお答えしたいと思います。正直なところ、4年前にバーベキューをやろうと言ったとき、みんな嫌がってたんです(笑)。嫌がっているので中止しようという話もあったぐらいですが、最初は強制に近いムードで始めたところ、楽しかったという声が上がりました。なので、ある種の強制が必要な場面もあると思います。

それ以降は、社員の中から代表を4~5人選んで、「あなたたちがイベントを企画してくださいね」「好きなことをやってください」と任せました。選ばれた人たちが自分たちで考えるのと同時に、周囲の人たちに「助けて」と声を掛けたことで、どんどん輪が広がっていったんです。結果的に、皆が自分ごとに感じるようになって、今では参加率が9割を超えるようになりました。

トップダウン型の強制と、局面に応じて自主性に任せて人を巻き込む仕掛けを行っていくことが重要ですね。

田中(ヤフー):自主性については、私も非常に重視しています。うちの会社では決まりや制度があるわけではないですが、上長とメンバーで日々の働き方に関するコーチングの時間を作ることに重きをおいています。業務の内容というよりは、働き方について1週間に30分ぐらいのコーチングをすることが有効だと考えています。

田中(さくら):AIに限らず、基本的にテクノロジーを大事にすることは徹底しないといけないと思っています。気をつけないといけないのは、個人住宅にすでに入ってるのに、会社には入れちゃいけないと思う感覚なんです。消費者として便利だと思ったものは会社に適用できるんじゃないか、という感覚を持ってほしいです。

「ロボット」というと目があって動く人型のようなイメージがありますけど、自動ドアもロボットですし、自動改札機もロボット。世の中にロボットってたくさんあるんですね。AIに関しても、たとえば洗濯機で洗濯ものがふわっと乾くのは、センサーで測って仕上げているわけで、あれも一種のAIなんです。だから、世の中にあるテクノロジーをハードルの高いものと思わずに、コストがそれほど高くない限りは何でも飛びつくべきです。そして「人がやったほうが安いからテクノロジーはいらない」ではなく、「人のほうが安くてもテクノロジーを導入する」と意識を変えることも重要です。

それからもう一つ、実は一昨年から全社の忘年会をなくしたんですね。その代わり「1人1回5000円出すので、行きたい人は勝手にやってください」と言ったら、めちゃめちゃ忘年会が開かれるようになったんです(笑)。つまり、「忘年会が嫌だ」という問題にフォーカスして改善するより、まずはポジティブに「みんなで仲良く飲めるといいよね」というところからアプローチすればいいんじゃないでしょうか。


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■みんなで仲間を増やしていこう

小室:ありがとうございました。では、最後に簡単にメッセージをいただければと思います。

田中(さくら):「幸せになる」とか、誰でも共感できるような目標を持つこと。ポジティブアプローチで“なりたい姿”をイメージすること。そして社員を管理するのではなく、信頼すること。信頼関係が重要です。そして、最後に言いたいのは、やはり「経営者がすべてのがん」と言われるように、経営者の改革が不可欠ということですね。

田中(ヤフー):昔は3カ年計画などを立てて会社を運営していたんですけど、もはやそれでは時代の速さについていけないのを感じています。なので、仕事ももちろん一生懸命やりますが、その後に外に出て、いろんな人に会って情報をインプットして、世の中にフィットしたサービスを出していくことが求められると思っています。われわれ自身もまだまだ働き方改革でやれることはあるはずなので、しっかり取り組みたいですね。

神田:やはりトップの考えはものすごく大事ですので、もしトップにアプローチできるのであれば、ぜひトップの考えを変えるようなアプローチをしていただきたいと思います。それが難しいのであれば、直属の上司やその上の上司にアプローチしていただきたいですね。

何よりボトムアップの力も大事ですので、このセミナーで皆さんが聞いたことを、ぜひ周りの同僚や課内に広めて、どんどん仲間を増やし、ここにいる全員で世の中をよくするといった意識で取り組んでいければと思います。

小室:今いろんな企業さんをコンサルしているのですが、現場には手強い人がたくさんいます。皆さんも仲間を増やすのに苦労することが多いと思います。そもそも早く帰りたくないという人がたくさんいるのですが、私はそんな人に対して「今の仕事を、減らしたい仕事と増やしたい仕事に分けてみてください」とお聞きします。

実は、仕事熱心な人は、増やしたい仕事だけでなく、減らしたい仕事も山ほどあるんです。そこで「減らしたい仕事にどれぐらい時間をかけているのか、一緒に分析しましょう」と言うと、結果的に4~6割の時間を減らしたい仕事に費やしているという事実に気づきます。

そして、「減らしたい仕事から3割の時間を削り、そのうちの15%を増やしたい仕事に移して、15%は早く帰りましょう」というと、いつの間にか15%の時間早く帰ることができるようになるんです。これは、いろいろな方がモチベーション高く働き方改革に向き合える方法なので、ぜひこういうアプローチでやっていただけたらと思います。

ここからは皆さん次第ですので、ぜひ一気にアクセルを踏んで、坂をぐっと飛び越えていくぐらいの働き方改革にしていただきたいですね。今日は充実した時間を皆さまと過ごすことができ、本当にありがとうございました。


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