アステラス製薬株式会社

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ワークライフバランス推進企業の事例と致しまして アステラス製薬株式会社 人事部ダイバーシティ推進室長 米奥美由紀様、人事部報酬・労政グループ次長芦澤幸裕様と小室の対談をご紹介致します。

※お相手:
アステラス製薬株式会社 人事部 ダイバーシティ推進室長 米奥美由紀氏(以下 米奥氏)
アステラス製薬株式会社 人事部 報酬・労政グループ 次長 芦澤幸裕氏(以下 芦澤氏)

※聞き手:株式会社ワーク・ライフバランス 代表取締役社長 小室淑恵氏(以下 小室)
株式会社日本能率マネジメントセンター 出版事業部  久保田章子氏(以下 久保田氏)

所定労働時間の削減

米奥氏:
弊社は日本生産性本部のワーク・ライフ・バランスカンファレンスで『第3回ワークライフバランス大賞』を受賞しました。第1回目は、大賞該当企業がなく、第2回目はパナソニック電工株式会社・パナソニック電工労働組合が受賞しましたよね。
 
小室:
すごいですね!
第1回目は大賞受賞該当企業がなく、それだけ妥協せずに選んでいる中で、本当にすごいことですね。

米奥氏:
今回、弊社の取り組みで評価されたのは、合併後の課題として、「労働時間の削減」と「女性MRの離職率低下」を推進したことの2つでした。
 
小室: 
取り組みの内容全体を詳しくお聞かせください。
 
芦澤氏:
弊社は2005年の4月に100年近い歴史を持つ2社が合併して作られました。合併にあたって、お互いの会社の良いところを残しつつ、新会社にとって本当にふさわしい制度となるよう検討しスタートしましたが、実際に運用をはじめると課題が表面化してきました。そこで2006年4月に6つの労使委員会を立ち上げ更なる人事制度の整備に取組みました。

その一つが「男女共同参画分科会」ですが、当時私はその分科会に参加していました。
分科会のまとめとして、アステラスにおける「男女共同参画」とは、「アステラスグループに集う私たち全員が、『VISION2015』の実現に向って、ジェンダーバイアスのない組織風土と適切なワークライフバランスの追求を通じて、より高い成果を発揮しつつ、活き活きと働き続けようとする取り組み」と位置づけました。この考え方を具現化する取り組みが2007年から始まりました。
その最中、講演会で小室さんのお話を聞く機会がありました。小室さんのお話を聞くたびに自分自身のワークライフバランスに関する考えを徐々に醸成していき、その考えが以後の弊社の取り組みに活かされることになったと思います。『ジェンダーダイバーシティ』と『ワークライフバランス』を推進するために必要な枠組み改革と社員の意識改革をセットで行っていくことが出来ましたね。
アステラスに集う一人ひとりの社員が何らかのライフイベントを抱えたときに、制度面での支援がないために退職せざるをえないことは悲しいことです。もちろん全ての事象に対応することは難しいです。会社としての考え方を社員に伝え、それに即した制度等を整え、アステラスでのキャリア継続を可能とし一人ひとりの能力を存分に発揮していただくwin-winの関係を築くことが制度設計の根底にあります。

2007年から検討を始めた所定労働時間の短縮は、例えば毎日15分の短縮では、あまりに短時間過ぎて、一日の労働時間に埋没してしまい本来の目的であるワークライフバランスの向上に繋がらないのではないかという危惧がありました。そこで単なる所定労働時間の短縮ではなく、実質的なワークライフバランスに有効な手立てになるよう検討した結果が Family Friday( FF Day)です。実際にFF Dayを実現するまでには2年近くかかりました。アステラス製薬単体だけで進めるのではなく、グループ会社も含め検討しましたので、各グループ会社の事業特性を反映し各社にとって無理のない制度にする過程が苦労しました。FF Day以外にどんな取り組みが出来るのかを考え、何度もディスカッションし、2年を経てようやく今年の4月にFF Dayが実現しました。
また、FFDayにはもう一つ別の効果を期待しています。メンタルヘルス対策です。当時の人事部長が産業医の先生からメンタルヘルス防止策として?1日5時間以上の睡眠、?週に1回の運動、?平日に家族と食事をすることの3点をやっていればメンタルヘルスにはなりにくいという話を聞いていました。FFDayは?にも寄与すると考えています。

久保田氏:
FF Dayやろうと決めたのはいつ頃だったのですか?

芦澤氏:
2007年上期に各社、各本部と議論を重ね、FF Dayとしての方向性についてマネジメントの承認を得たのが2007年の10月。労使委員会に答申し承認されたのが2007年12月です。その時点で2008年度は、2009年度から時間外労働を追加発生することなく所定労働時間を短縮するための準備期間と位置づけ、各社・各部門での検討をお願いしました。また、「やれば出来る」という経験を積んで欲しいとの思いから、2008年度は可能な部署はFFDayの先取りとして金曜日は定時前(当時は17:45)の帰社を推奨しました。

米奥氏:
私は当時、総務部CSR室に在籍していました。総務は、その業務内容から、全員が固定日(金曜日)に一斉に帰るということはできませんので、、社員一人ひとりが「一週間のうちで早く帰れる日をつくろう」ということで進めていきました。一方で、CSRは、臨機応変なスケジュール調整が可能な業務が多かったので、毎週金曜日17時退社を推進していきました。

各部が、それぞれの業務内容を考慮した上で、個別の取り組みをして行きましたので、その取り組みの内容は社内イントラで共有するようになっていました。取り組みを行っていない部門は、社内イントラの内容が改訂される度に「自分たちの部門もやらなくちゃ」と感じるようになったと思います。

小室:
社内イントラで共有して、行っていない部の人たちの意識を向ける。そうして意識醸成をしていったのですね。FF Dayに関して、イントラでの報告・共有以外には、他に人事部として行いましたか?

芦澤氏:
一旦方向性を決めてしまえば、その後の具体的な取り組みは各部署に委ねることにしました。細かなことまで人事部が口出しするよりも各マネージャーが中心となりそれぞれの部署に適した対応を自立的にしていただくことが重要だからです。まず、殆どの部署で緊急対応を除き16時以降には会議を入れないようになりました。あとは一人ひとりの意識次第です。16時に退社するために仕事の段取りを逆算し調整するようになります。こういった仕事の進め方の習慣が他の曜日にも好影響をあたえることを期待しています。

小室:
素晴らしいですね!
「トップの意識改革」といった側面からはどのような取り組みをしましたか?

米奥氏:
弊社のトップを含め部長以上全員とグループ会社社長を対象に、東京大学社会科学研究所の佐藤先生のご講演『女性の活躍の場の拡大とワークライフバランス支援−管理者の役割と働き方の改革』を開催しました。参加者は全員男性です。何かを変えるためには、まずマネジメント側が変わることが必要であると考えての企画です。佐藤先生のご講演を拝聴した部長からは,「目から鱗」だとの声や、説得力の高い,かつ楽しいご講演で,続きをもっと聞きたいなどの要望が寄せられました。「昔の働き方がダメ」ということではなく、「時代の変化とともに変わらなければならない」との佐藤先生のお話から、本部長,部長,グループ会社社長それぞれの立場で,組織マネジメントとしてやるべきことのヒントが得られたようで、とてもインパクトのあるご講演でした。しかも、ご講演日がFF Day施行初日だったのです。
 
久保田氏:
管理職層の意識改革からということで、きっと社内浸透度も早かったと思うのですが、下からの反発はありませんでしたか?

芦澤氏:
最初はやはり反発がありましたね。業務量がかわらないのにどうすればいいのかと。でも『時間ありき』『時間に縛られている』という感覚は確実に変わっていると思います。極端な例ですが、「終電の時間は何時?それまでは働ける」といった感覚の持ち主もいましたから。「時間も重要な経営資源である」ことをマネージャーの方々が理解し各職場で実践していただくことで、無駄な業務や過剰なサービスに対する社員の意識も変わってきていると思います。

米奥氏:
マネージャー以外の社員が22時以降に残業しているまたは休日に出勤している場合、その翌週に、人事部からその社員の上司に実態を報告するという制度も取り入れました。22時以降に残業する場合には、事前申請することを徹底するようにもしました。社員の残業があまりにも多い場合、上司にイエローカード、レッドカードとして報告される仕組みになっていて、更に残業していた本人には、健康状態確認のため、問診票に答えてもらうようになっています。

小室:
この他、グループ会社の施策などに関しても詳しく話を聴かせてください。

米奥氏:
下期は、「働き方を変える」ために、国内グループ全職場で,ワークライフバランスの研修を行うこととしました。まず,ダイバーシティ推進室から、全職場のマネージャーにワークライフバランス職場研修を実施し、各職場に合ったツールを使って、「一カ月でいいから何か試しにやってほしい」とお願いしました。仕事をリスト化して、課題を出して、解決策を考えるとなると、重く時間がかかってしまいますので、『6時に帰るチーム術』をヒントに、難しく考えず、何でもいいからやってほしいとお願いしました。各職場では,「ワークライフバランス」のDVDを視聴した後,上司が部下にワークライフバランス研修を実施し、上司が考えた働き方を変えるきっかけを得るツールを、部下が納得した上で取り組んでもらうように、研修の内容を工夫しました。他にも、ワークライフバランス推進のポスターを各フロアや部屋に掲示したり、FF Dayのお昼休みには、社内アナウンスを行ったりしています。

久保田氏:
社員からすると短時間労働は残業代削減のためと誤解される場合もあると思うのですが、その辺は大丈夫でしたか?

芦澤氏:
大丈夫でした。FF Day実施に際して賃金・手当は一切変えていませんから。

小室:
賃金を変えなかったとは、すごいですね。他社ではなかなか出来ないでいますよ。

トップの考え方は変わりましたか?

芦澤氏:
検討段階で人事部長だった方が担当役員になられたので、その後の取り組みもスムーズに進めることが出来ました。経営トップの方々が様々な場面で今回の取り組みの経営上の位置づけや重要性を話していただくことで、会社の本気度が社員に伝わったと感じています。

久保田氏:
パフォーマンスを下げずに時短にするという約束をされたということですが、約束は守られて、更に売り上げへの影響はありましたか?

芦澤氏:
売り上げへの直接的な影響は分かりません。FF Dayは施行から半年が過ぎましたが、失敗したという雰囲気は全くありません。やって良かったということを社員自身が感じていると思います。

久保田氏:
現場の社員の声などはお聞きになりましたか?

芦澤氏:
良くないことは直ぐに苦情や改善提案としてあがるものですが、FFDay実施後、幸いにしてそのようなことがありません。そのことが社員の声だと捉えています。また、社外の方々が私たちの取り組みを認めてくれたことで、自分たちの取り組みに間違いはなかったと再認識することができたと感じています。実際にFFDayによるメリットをそれぞれ感じてもらえていると思います。

小室:
実際に早く仕事を終わらせて、早く帰ることによって得られるメリットを体感させてしまう。「もう、前のようには出来ない」と思わせてしまうということですね。
 
久保田氏:
施策を先導していく側として、どのようなことを意識し、取り組んでいきましたか?

米奥氏:
下期の全職場でのワークライフバランス研修の実施に先立ち、各本部をそれぞれ統括する部門の部長及び人事担当者と、綿密な打ち合わせを行いました。まず、それらの部門に了解を頂くことが、研修を効果的に実施するために重要だと判断したためです。事前の打ち合わせでは、各本部の業務実態に合わせて具体的な取り組み方法について検討し、合意を得ました。

芦澤氏:
人事部は提案はするけれども最終的な意思決定は各グループ会社、各本部が行うことを常に意識しました。各組織の業務内容と働き方は直結していますから、これが全社ルールですといった押し付けは決してうまくいきません。全社ルールで実施できない課題があれば、解消するための提案をし、検討していただくステップを繰り返しました。その結果、「これならいける」という確信とまではいかなくとも感触を持ってもらうことが重要でした。

小室:
その手法、コンサルティング並みですね。『チーム術』を使って、難しく考えずに簡単に施策を考えてほしいという方法も、すごいと思いました。

導入企業

部下と上司のコミュニケーション促進

小室:
ロールプレイイングのお話も詳しくお聞きしたいです。

米奥氏:
上司が考えた各職場に合ったツールを一ヶ月間実施してみようということに対し、部下からの反発があった場合にどう説得するかについて,事前に何か対応しておきたいと思いました。
一つそこで考えたのは、部下の個性及び働き方を十分に理解した上で、その部下に適した説得する方法を、マネージャー同士で考えてみるということです。上司は一対一で部下を説得することには慣れていますが,部下全員がいる前で、オープンな形で説得するのはなかなか難しいと感じる上司も多いです。「私の部下はこういう気持ちで自分に反対していたのか」と、部下の気持ちも理解できるように、ロールプレイを工夫しました。

小室:
このロールプレイイングは有志の集まりで行っているのでしょうか?

米奥氏:
いいえ。上司全員を対象にして行っています。

小室:
ロールプレイイングの効果は出ていますか?

米奥氏:
DVDの視聴により、マネージャーは少なからず「働き方を変えなければならない」という思いを持ったようですので、やはり効果があったように思います。

小室:
まず最初にマネジメント層がDVDで勉強して、それから部署でDVDを見るとは、とても教材をうまく使っていらっしゃいますね。下の意識醸成が出来ていない状態で上が施策を凝らしても、抵抗にあって砕けてしまうパターンが多いんです。
 
米奥氏:
このロールプレイイングによって、マネージャー同士でのコミュニケーションが促進されたような気がします。互いにノウハウ、アドバイスを提供し合ったりしています。ダイバーシティ推進室へも、「こんなことで困っているが、何をしたらいいと思う?」といったマネージャーからの問い合わせが時々あるのですが、そういう時私たちは「まずは自分でどうしたらいいか考え、それでも困ったら他のマネージャーと相談してみたら?」とアドバイスするようにしています。

導入企業

女性MRの離職率低下

米奥氏:
弊社の女性MRの離職率は男性MR離職率の約5倍ありましたが、女性MRの離職の一番の理由が、結婚でしたので、結婚がキャリア継続の障害とならないように、2008年4月に『結婚時同居支援制度』を導入しました。制度を導入した効果は大きく、女性MRの離職率は2005年度の約11%から2008年度約6%へと大きく改善されました。

小室:
それは、すごいですね。
出産後のママさんMRは、たとえ仕事を好きでやっていたとしても、仕事ばかりやっている自分自身を疑ってしまうときがあります。ママさんMRが増えることで、そういった女性がモチベーションを下げずに働き続けることも出来ますね。
女性の離職率が下がった他に、数値的に効果が見える変化はありましたか?

芦澤氏:
FF Dayに向けた準備段階の数値ですが、2008年度は、前年比で上期約4時間/月、下期約7時間/月の時間削減に成功しました。これはグループ会社を含めない、管理職から一般職の平均削減時間を出したものです。

小室:
社員の健康が確実に守られていますね。
それぞれの取り組みを共有して、お互いに刺激しあい、良いスパイラルを生み出せている。
「とりあえずやってみる、だめなら戻して、次をやってみる」というアステラス製薬さんの姿勢もとてもいいですね。

ありがとうございます。本日はお時間ありがとうございました。

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