
TOP > 総力特集 > パパへ提案!子育てのススメ!…安藤哲也氏
インターン生:
ファザーリング・ジャパンNPO法人認定おめでとうございます!
さっそくですが、立ち上げのきっかけを教えてください。
安藤:
僕は4年前から、パパ’s絵本プロジェクトという父親のチームによる絵本の読み聞かせ活動をしていたんです。男が絵本を読むというもの珍しさや、絵本ブームの後押しもあって大好評。これまでに全国各地で通算100回ほどやっています。でも最初はお母さんと子どもの参加ばかりでお父さんが来なかった。しかし回数を重ねるうちに、父親参加率が上がってきました。特に、一年半前くらいから、父親の姿が急に増えたんですね。若いパパさんたちです。
けれど同時に、会場にいても「笑わないお父さん」がちらほらいるのも見えてきた。こどもとお母さんは絵本で笑うのに、最後まで全く笑わないお父さんがいて、ちょっと不気味。で、よく見ると、その親の子どもも「笑いが細い」ということに気がついたんです。
例えば、可笑しな絵本で会場大爆笑なのに、その子は必ず親の顔を見て、「笑っていいの?」って顔をするんだよね。それを見て、あぁ、きっとこの子は家族(特にお父さん)が家で笑ってないから、笑い方を知らないんだなと想像し、「これはまずい。もっと笑ってるお父さんを増やさねば!」と思ったのがキッカケです。

僕は絵本のボランティアで通算2000人以上、また保育園や小学校でもたくさんの子どもと接してきたから、子どもを取り巻く環境の移り変わりや、リアルな子育て事情もこの目で見てきました。
最近の傾向として、子育てをすることを「ファッション」と捉える父親もいたりして、それはそれで「入り口」としてはいいんだけど、そんな甘いもんじゃないよね、子どもって。それにそういう父親って「見た目」ばかりで精神性が全くついてきていない。それってなんか逆に「カッコ悪い」、と僕は思うんだよね。

インターン生:
今後、どういった形で展開していくご予定ですか?
安藤:
セミナーやワークショップの開催、お父さん限定の育児コミュニティ、父親が主体的に参加する保育園の運営、あとは父親のための検定試験などを考えています。「パパ検定」は、例えば「育児休業は法定でどれくらい取れますか?」「『クレイマークレイマー』(仕事人間のパパが子育てに悪戦苦闘する映画)のパパ役の俳優は誰でしょう?」といった、子育てスキルだけでなく、暮らし全般や経済面そして文化面などからも出題を考えています。男ってさ、「点を取ること」に燃えたりするから、次世代のパパ予備軍にもおもしろがって受けてもらえたらいいなーって思います。
インターン生:
たしかにパパ検定1級持ってますっていう男の人は結婚相手として素敵だなって思いますね(笑)。安藤さんご自身は、昔から子育てに興味があったり、子どもが好きだったのですか?
安藤:
20代の頃は子どもはあまり好きじゃなかったな。でも、35歳で娘が生まれてから、自分の中で意識が変わった。ファザーリング・ジャパンでも「子どもができたら、OSを入れ替えよう」と言ってるんですよ。そうじゃないと、お父さんは子育ての大変さでフリーズしちゃうからね。その点、女性は妊娠した時点で、自動アップデートが完了しているんですよね。そのあともサクサクできちゃう環境を自分で作っていける。でも父親はなかなかそうならないんですよ。
僕の場合はかなり奇特なパターンで(笑)、産まれてくる子が「娘らしい」と分かった瞬間、まずは絵本を100冊買って、子どもの誕生を待ちました。で、生後半年くらいから5歳まで、ほぼ毎晩2冊ずつ、娘に絵本読んであげたんだ。今は、9歳なので、絵本じゃなくって漫画の方が好きになっちゃったけど(苦笑)、約5年間「やるだけやって楽しめた」って思ってるから、娘が離れていってもあまり淋しくないんですよ。だから、他のお父さんたちには「今やっておかないと後悔するよ!」って言ってます。
絵本読んだり、オムツ替えたり、一緒に遊んだりして過ごした濃密で幸せな時間って、親子の絆の太さと比例するんだよね。その信頼関係があれば、たとえば娘が思春期で迷ったときも意見する僕に向かって、「なんで今さら父親面するの!」なんてことは言わないと思うし、きっと彼女だって、僕を悲しませるようなことはしたくないって考えてくれるんじゃないかな。

インターン生:
子育てを通して、安藤さんの中で変化はありましたか?
安藤:
うーん、そうだなあ。月並みだけど、自分の世界が変わったね。子育てを通して地域社会にコミットすることで、ネットワークや問題意識の幅が広がる。保育園に9年間毎日通っていると、園の先生やほかのパパ・ママとも仲良くなっちゃって、地域で家族ぐるみでエンジョイできたり、またその繋がりが仕事にも活きるんだよね。
それは最初ある程度想像できたし、実際そうしたかったので、僕は娘の誕生とともに職場を変えました。片道通勤1時間とかだと、保育園からの呼び出しとかに対応できないでしょ。だからまずそっちに主眼を置いたんだよね。どうすれば子育てを主体的にできるか、どういう環境でなら子育てを十二分に楽しめるか、を徹底的に考えました。子どもとの幸せな時間を確保するために、自分の仕事や生活を編集する(カスタマイズ)する、という感覚かな。
あと仕事の面では、タイムマネジメント力、問題解決能力・問題察知能力なんかが身についたかな。子育てをちゃんとできる・してきたお父さんは、たぶん仕事でもその能力を発揮して、いい仕事してると思いますよ。仕事も子育ても両方前向きにやってるパパはすごい!そのことを、ファザーリング・ジャパンではたくさんの父親モデルを示して証明したいんです。
でもほんと、うちは親子揃って保育園に育ててもらったなぁ、と思います。この3月で下の息子が卒園したんだけど、最後の「シーツかけ」は「これで最後だなー」って感慨深かった。どうしてこんな愉快で感動的なことを、多くの父親は母親に独占させておくんだろう?と僕は思うんだけどね。
インターン生:
安藤さんが子育てをしていて、当時あったらいいなという会社の制度などありますか?
安藤:
時短(短縮勤務)というか、子どもや奥さんの生活ニーズに合せて、フレキシブルに対応できる時間の確保かな。当時、僕は本屋をやっていて、妻もフルタイムで働いていたから、妻の帰宅時間までは僕がレジで子どもを背負いながら働いていたんですよ。で、妻が帰ってきたら、子どもを渡して、仕事を続けるという具合に。
インターン生:
楽天に移られた時も、子育てと両立しやすい環境かどうかチェックされましたか?
安藤:
やりたい仕事があるからこの会社にいるんであって、特に子育てに関する社内制度をチェックしたりとかはしませんでした。まあ自分で時間管理できて、保育園の送迎に行ける環境があれば別によかったんです。僕の仕事はある意味専門職だから結果を出せば、ある程度は周りも認めてくれるから両立は特に問題ないんです。これまで8回転職してるけど、全部そんな感じかな。
社内の制度に期待するのも分かるし、誰もが利用できる子育てしやすいルールができるのは大事なことなんだけど、それをただ待つのではなく、自分がパイオニアのつもりで、切り開いていくことも大切だと思う。あとに続く若い父親予備軍のためにもね。
まあ僕のやり方はかなり強引だったので、あまり参考にならないと思うけど、ひとつのロールモデルとして若手が覚えていてくれれば、それはそれでいいと思うんだよね。
インターン生:
安藤さんが子育てをされていて嬉しかったことは何ですか?
安藤:
子どもの成長は素直にうれしいよ。ふたりの子がじゃれて楽しそうに遊んでるのを見ると、「あぁ、これが幸せなのかも」って思うことはよくあります。でも、その直後にけんかを始めたりして、天使が悪魔になったりするんだけどね(笑)。幸せって、「いつもある」ものじゃなくて、「ときどきやってくるもの」だって学ぶよね。
そしてあとは、ファザーリング・ジャパンの活動を通して、仲間の輪が広がっていくことが、最近は何よりの喜び。子どもがいなかったら、こんなこと始めるはずなかったしね。
インターン生:
世の中の子育てに悩むパパにアドバイスはありますか?
安藤:
現状がうまく行かずに苦しいのなら、自分の家だけで抱え込まずにまずは勇気を出して、周りに助けを求める方がいい。できれば実家ではなく、地域に友達を作るのがいいね。子ども預かったり、預かってもらったり、大変なときはお互いに助け合えばいい。うちでも、よく、家が忙しい娘の友だちがご飯食べてたり泊まったりしてるよ。それが普通だし、子育て家庭ってお互い様なんだよ。母親がシャイな性格で地域でそういう関係を作れないのなら、父親がやらなきゃ。子ども連れてる近隣の人に話しかける。ビール持って隣人の家のドアをたたけばいい。考え過ぎずにまずは地域レベルやってみようよ。たぶん、同じニーズの人は近くにいるから。
実際に、僕の周りのお父さんたちはどんどん変わってきてるんですよ。「忙しいからちょっと…」って言ってたお父さんも、一度地域でPTA活動とかやってみるとスイッチが入る。会社の仕事とは違った楽しみを見つけるんだよね。それが父親としての成長にも繋がるんです。
そういう、いい循環を僕は築きたいんだ。そのためには会長の僕がまず楽しくやらないとね(※4月から安藤さんは小学校のPTA会長になりました)。 楽しそうにやっていれば、周りも寄って来て参加してくれる。そこが肝心だね。
また父親の中には、時間ができて早く家に帰っても、「子どもに対して、どういうことしたらいいかわかんない」っていう人もいます。そんなときには、遊びとか、絵本を読むとか、一緒に家事するとかの「技」を持っておくことが大切です。
ファザーリング・ジャパンでは、お互いのパパ芸(技)を伝授しあおうと思ってます。例えば、料理の上手い人が「パパごはん講座」。ミュージシャンのパパが「ウクレレ講座」。あるいは美容師のお父さんは「子どものヘアカット講座」という具合に。子育てを楽しんでるお父さんたちは色々なOSを持っているから、そんなお父さんたちが集まって互いにスキルを交換できればいいよね。
インターン生:
安藤さんは子どもにとってどんなパパでありたいですか?
安藤:
うーん、難しい質問だなぁ。子育てするのは、子どもに好かれたくてやってるわけじゃないからね。自分が楽しくて、子どもの存在ってすごいなー、学ぶよなーって思いながらやってるだけなんだよね。うん、大変な子育てを通じて、自分自身が「自立してる大人になる」「いつも笑っている父親でいる」ってことが重要なんじゃないかな。
ファザーリング・ジャパンの活動は、父親の子育て支援イコール、お父さんの「自立支援」なんだよ。で、自立できたらそれで終わりじゃなくて、ネガティブな子育て情報が蔓延している世の中にその楽しさを伝えたいじゃない?それが僕だけではなく、全国に笑ってる父親がたくさん生まれたら、きっと家庭も地域も企業も、そして社会も変わっていく、と僕は思うんだよねえ。
いまの若いお父さんたちは、たぶん自分の父親しか「父親モデル」を知らないから、それが良くも悪くもお手本になっちゃってる。でも現在は、経済背景も子育て環境も変わってきてるんだから、それに囚われずに、いいところは採り入れて情況に合せて柔軟に子育てして欲しいな。
また、「子育てって楽しい!」って思えるには、主体的にコミットすることが大事で、加えてマニュアル通りじゃなく自分流にアレンジすることがミソだね。「よそはどうあれ、これが我が家のハウスルール」と割り切ればいい。暮らし方や子どもの成長とかを、人の家と較べるほど愚かなことはないからね。
衣食住においてそれなりのものは必要だけど、ある意味子どもは勝手に育っていくから大丈夫。子どものことばかり考えないで、まずは父親である自分自身がどうすればハッピーに人生を送れるかを考えてほしい。お父さんが笑ってないと、子どもだって笑わなくなっちゃうんだから。
インターン生:
弊社の基本理念でもある「ワーク・ライフバランス」ですが、安藤さんにとってのワークライフバランスとは何でしょうか?
安藤:
マイライフを充実させるには、いろんな要素があるはずで、それを分けて考えるのではなく、まず、自分はどんな人生(ライフ)を送りたいのかを自分自身に問うべきだね。ワーク対ライフでバランスを取ろうとするからよろけるんであって、仕事も子育ても両方とも一緒にリュックに詰めて背負ちゃえばいい。その方が重心も安定して、軸がぶれないんだ。それがあれば、たいていの問題はクリアできるよ。父親はいま、その確かな軸を自分で獲得することが大切なんじゃないかな。
でも、僕がそう思えるようになったのは、やっぱり子どもができてから。子どもにとって親は社会を知るための貴重な情報源。つまり、親の生き方を見て子は育つんだから、まずは父親自身がハッピーじゃないとね。大人が楽しそうに生きてないと、子どもは社会に出るのがきっと臆病になる。だから、お父さんはいつも自分らしく生きて笑っていないとね!
インターン生:
今後、どんなことに挑戦されますか?
安藤:
まずはファザーリング・ジャパンのミッションをどんどん追究したい。仕事はどうだろ?飽きっぽいから、明日以降5年未満は自分でも読めません(笑)。とりあえず40代ではラジオDJに挑戦したいし、55歳になったら京都でロックバーと本屋が合体した店を作りたいんです。後悔したくないから、常にやりたいことをやってると思います。いま40代の折り返し地点だけど、「守り」には入りたくないんでね。常に挑戦を続けて、いい歳の取り方をして、いつも仲間とうまい酒が飲めてたらサイコーだな。